RESONANCE ~共鳴 (2016年3月)

アスペルガーなどの発達障害の身内を持つと、その子供や配偶者は不安を抱えやすいと言われている。フランスの心理学者ガストン・バシュラールは、これをカッサンドラ症候群と命名した。カッサンドラは、人々から決して信じてもらえない予言者のことで、ギリシャ神話に登場するトロイの王女である。アポロンに予言の能力を授けられたが、その呪いで誰にも言うことを信じてもらえずに不安と不信を抱えることになった。

ある看護師さんの事例である。彼女は、最近担当になった自分の母親と同じくらいのある患者さんにいつも腹を立てていた。何をしてあげてもあまり期待したような反応がなく、「ありがとう」の言葉もなかったからと思っていた。それにしても、なぜこんなに腹が立つのか自分でも不思議だったのだが、あるとき自分の母親と、この患者が似ていることに気がついた。母親は一日中テレビの前にいて、家の中はいつもだらしなく散らかっていた。小学生の頃から母親とは意志の疎通がなぜかうまくできず、そのためいつも心の中に不満と不安があった。

後に、この患者がアスペルガーであることが判明する。アスペルガーの人の中には、他人の感情がよく理解できないので、どう反応していいのかがわからず、いつもTVのドラマなどで他人の感情を学習しようとしている人がいるというのだ。その話を聞いた時に、なぜ自分の母親が一日中テレビのドラマばかりを見ていたのか、初めて母親の病を理解できたという。